社長椅子にふん反り返って、カチカチとしきりに親指の爪をかじっていたリャン・チーは、
退屈極まりないという感じで天井を見上げると、「あ〜」とため息を吐き出した。
視線を目の前の机に戻し、置いてあるオモチャの拳銃を握ってはみるも、
それもつまらないというふうに首を横に振った。
カミングズを撃つのも飽きた。
彼は先ほどから数メートル先の床で、
オレンジ色の弾丸にまみれながら、ピクピクと痙攣して伸びている。
リャンは汚いものを見るようにそれを一瞥すると、またうつろな視線を天井にさまよわせた。
愛しのアルファルドにまったくと言って良いほど構ってもらえない不満は、
この程度の行為ではとても埋め合わせにならない。
最愛の女性に無視されるストレスで、リャンの不満は限界にまで高まっていた。
イライラした人間は、物に八つ当たりをしたり、やけ食いをしたりして、気を紛らわせようとすることがある。
人間の脳の中で、食欲・攻撃欲・性欲の三つの中枢は集中しているらしく、
従ってリャンの場合、こういうときは決まって激しい性欲を覚えるのだった。
ふたなりの彼女は、それでなくとも普段から性欲が強い。
リャンは携帯電話を耳に当てた。呼ぶのは女ではなく、『肉便器』だ。
呼び出し音が二回半繰り返されたところで、大慌てという感じで相手が出た。
『は、はい、ユンユン食堂っ?!』
きっと仕事中だったのだろう。
ユンユンの緊張した声の周囲では、調理場の音が響いていた。
「…五分で来なさい。遅れたら殺すわよ」
一方的に命令を告げると、リャンは電話を切った。
『りょ、了解しました!ただいまお届けにあがりますっ!!』
電話の向こう側で、敬礼しているユンユンの姿が目に浮かぶようだ。
届ける物とはつまり、彼女自身の肉体だ。
男を知らないユンユンは、
イライラを持て余し性欲を爆発させたリャンに処女を奪われて以来、彼女の肉便器に使われている。
仕事中だろうが、早朝ぐっすり眠っていようが、
リャンに呼び出されれば、ユンユンは犯されるためにすぐに飛んでくる。
餌付けされて生かしてもらっている立場ゆえ、逆らうことなど出来ない。
三十分後、息を切らしたユンユンがおっかなびっくり社長室にやってきた。
「すんません、遅くなっちゃいましたぁ…」
「あ゛あん?!」
「ひぃぃ…し、失礼しました…」
そもそも五分で来られるはずがないのだが、
機嫌の悪いリャンの反応に、ユンユンは丁寧な言い方に直した。
これでも電話が切れた直後に仕事を放り出して、全力で走ってきたのだ。
その証拠に、ユンユンの顔はもちろん、お腹の部分までもが汗でしっとり濡れていた。
「あ、あのぉ、あたし、ちょっと汗くさいかもっす、アハハ…」
まさか行為の前にお風呂を使わせてもらえるなどとは思っていない。
それでも、あらかじめ自己申告をして『予防線』を張っておくことで、
恥ずかしさを少しでも和らげたいと思うのが年頃の娘の心理というもの。
だがサディストのリャンは、口の端を吊り上げながら意地悪く、
「あなたが臭うのは今日に限った話じゃないでしょう?」
と言い放った。
「え…」
ユンユンの照れ笑いは一瞬で消え、俯いてひどく自分を恥じるように赤面した。
リャンは心底楽しそうにクツクツと笑った。
「そんなことはどうでもいいから、とっとと脱ぎなさい」
リャンに言われると、ユンユンは肩にかけた袋を床に置き、
その中に自分の衣服や下着を詰め込み、裸になった。
リャンは社長椅子から立ち上がった。
彼女のペニスは既に勃起し、チャイナドレスの裾から飛び出していた。
それを見たユンユンは顔を引きつらせた。
硬い幹の部分は摩擦のし過ぎで浅黒く所々に血管が浮き、
包皮がいっぱいまで捲れて露出した亀頭は、ふちに反りが付くほど張り詰めて真っ赤になっていた。
リャンの下腹部に備わった器官は、まさしく恐ろしい凶器だった。
ユンユンに歩み寄り、リャンはまるでキスをするように、彼女の耳元に口を寄せた。
「あなたのそばかすだらけのブサイクな顔を見ているとチンポが萎えるから、
そこに四つんばいになってケツだけ私に向けなさい」
一番心が傷つくような残酷な物言いに、思わずユンユンが目に涙を浮かべた。
「そんな言い方はしないで欲しいっす…」
リャンはたまらないという様子で、小鼻を膨らませた。
「あら、正上位で繋がりたいの?」
「べ、別にそういうわけじゃ…」
「いいわよ、それならお望みの体位で犯してあげる」
「うわっ…きゃっ…?!」
ユンユンは押し倒され、足首を掴まれると、股を大きく広げさせられた。
「やっ、やっ…!」
声だけの抵抗が、リャンを余計に興奮させた。
彼女は長い舌を口から蛇のように伸ばすと、
獲物の味見をするように、ユンユンの性器を舐めはじめた。
「ひぃぃぃっ…?!」
温かいというより熱いくらいの舌で割れ目をほじられ、ユンユンは悲鳴のような声を発した。
リャンは鼻先を恥丘に押し付けるようにしながら、
ベロベロチュパチュパレロレロと、卑猥な音を立ててしゃぶり付いた。
淡いピンク色の粘膜部分を執拗に舐めまわし、
小さな穴の入り口に舌を入れてグチュグチュとかき回し、
内部をほぐしながらローション代わりの唾液を流し込んだ。
ユンユンが不快のあまり涙をこぼし、そして鼻をすすっていると、
リャンはその仕草と音に興奮し、いよいよ我慢ができなくなって、
先走り汁を垂らしているペニスを持ち、割れ目に押し当てた。
「入れるわよ…」
息を荒くしながら一方的に宣言してユンユンに覆いかぶさり、
彼女の脚で自分の腰を抱かせるような密着した体勢を取らせた。
ユンユンはされるがままで、首を縦に振って同意することしか出来なかった。
「あぁ、入るぅっ…!」
リャンは挿入し、腰を振ってピストンさせた。
ユンユンの膣は狭く、ペニスを動かすと肉が吸い付いてくるように締まり、
ジュプッ、ジュプッという音がした。
「気持ちいい!気持ちいいわ!」
焼けた鉄のように熱く張り詰めたペニスを、柔らかい膣肉で吸わせつつ、
思うままに腰を振って激しく摩擦させる快感に、
リャンは首を反らせ、歓喜の声を社長室に響かせた。
それからユンユンの貧乳を無理やり揉みしだきながら、噛み付くようにして乳首を吸った。
「ムチュッ〜〜!!チュゥゥゥ〜!!」
「い、痛っ…」
たまらずユンユンが背中を床から浮かせると、
リャンはその隙間に両腕を差し入れて自分のほうへ強く抱き寄せながら、
パンパンパンと腰を高速でピストンさせた。
「あっ、あっ、あっ、あっ!」
あまりに激しく突かれると、それに合わせてユンユンが声を漏らした。
リャンは夢中になって腰を振りながら彼女の口に吸い付いた。
「むぅぅ?!んん〜〜!!」
生温かいリャンの息の匂いに、
キスに不慣れなユンユンは目を白黒させながら、舌と唾液を吸われた。
リャンは彼女の口を自分の口で塞いだまま、獣のような激しさで腰を振り、
やがて絶頂を迎えた。
「いいっ!イクッ!そろそろイクッ!」
耳元で叫ばれ、思わずユンユンが「はいっ…?!」と返事をすると、感極まったリャンは、
「ああああっ!精子出るっ!精子が出るっ!私の精子で孕ませてやるからっ!!」
とまくし立て、最後の数秒間ものすごい勢いでピストンし、
「イクゥゥゥ!!」と叫びながらユンユンを抱きしめ、
キュンと持ち上がった尻の肉をブルブルと痙攣させた。
ユンユンの一番深い場所で、亀頭が震えるように小刻みに前後し、
その摩擦が最高の刺激となって、
鈴口から精液が『ビュルルルルー!』と飛び出し、リャンは射精した。
「おおおおっ!!私の精子で孕めぇぇぇっ…!!」
リャンは低い声で唸りながら、射精の快楽に陶酔した。
ドロドロで一続きになった精液が、ペニスが脈打つたびに勢い良く噴き出し、
ふたなりのリャンを征服感で満たした。
しかし、それは決して長くは続かなかった。
脈動はあっという間に勢いを失い、やがて精液が出なくなると、
ペニスは急激に硬さを失い、一瞬だけ満たされたと感じた心は、
広がった分だけ、むしろ以前より空洞が増したようだった。
リャンの歓喜する雄叫びが響いた社長室は、一転して静寂に包まれた。
先ほどまでの激しいピストンが嘘のように、
ユンユンに伸し掛かったまま、リャンの体は動かなくなった。
目をギュッと閉じていたユンユンは、恐る恐るまぶたを上げた。
リャンの全身に帯びていた熱が、一気に引いてゆくのを感じた。
柔らかくなったペニスが膣圧に負けてネトネトの白い糸を引きながら押し出され、
リャンの下腹部で垂れ下がった。
「…あー、もういいわよ、帰って。つうか、帰れ」
射精が終わったリャンは、ユンユンへの興味を完全に失っていた。
面倒くさそうに体を起こすと、背を向けたまま、手で追い払う仕草をした。
「は、はい…ただちに帰るっす…」
ユンユンは膣から精液が垂れるのにも構わず、
そそくさとパンツと服を着込み、逃げ出すように社長室を後にした。
「ひどい目にあったっす…」
自分の体が発する臭いを気にして、
すれ違う人々を避けるようにしながら、ユンユンは元気なく歩いた。
帰る先は、誰も待っていない、汚い海に浮かぶオンボロ船だ。
どうせさっきの仕事はクビに決まっている。
「はぁ…また別のバイトを探さないといけないっすね…お腹すいたなぁ…」
持ち合わせはあまりなく、ユンユンは饅頭を一つ買って、ぱくついた。
少しお腹が満たされると、元気が湧いてきた。
「ま、でもなんとかなるっすよ…明日からは…うん、明日はきっと、大丈夫っす…」
これだけひどい仕打ちを受けているのに、ユンユンの心は砕けていなかった。
見込みなんて特にないのだけれど、生きてさえいれば、
そのうち良いことが起きるのではないかと、そんなふうに思っていた。
例え、そのうち死んでしまう運命なのだとしても、
その瞬間が来るまでは、頑張って生きていよう、と。
帰る途中でふと目に付いた落書きには、こんなことが書いてあった。
『未知生、焉知死…?』
すなわち、精一杯生きてみないことには、死ぬ覚悟も出来ないのだから。
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